絵画資料
 絵画資料が建築史に及ぼす影響は、かなり大きいと思われます。歴史的な都市といわれる場所でも幕末を遡るのがやっとの現実で、絵画資料のもたらす視覚的情報は貴重な資料です。従来は文献資料を中心に復原がなされてきましたが、文献だけでは具体的な情報にかけることは否めません。

 絵画資料を歴史的な資料として用いる場合は、いくつかの注意が必要です。まず、「絵」だということ。あたり前の話ですが、写真とは違って、そこに描かれた情報が全てではないということです。ある時代に描かれた絵画だとしても、その時代にはない建物があったりや、あるはずの建物がなかったりします。これは、絵師が注文主の意図を反映しているからであり、「なぜ、この絵画が描かれたのか」を読みほぐさなければなりません。それと絵師は、建築の専門家ではないので、様々な部分がデフォルメされていたり、省略されていたりします。その絵画にとって必要のないものは、ことごとく消去されてしまいます。絵画資料を建築史に用いるためには、細心の注意が必要です。

 昭和の初めにこの分野の研究が始まり、近年の研究の成果によって絵画資料のもつ情報が不明瞭だった近世都市の様子をだんだん明らかにしてきました。

 有名な絵画資料に「江戸図屏風」、「江戸名所図屏風」、上杉本「洛中洛外図屏風」などがあります。


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